青色7号

思ったこと考えたことをひっそりこっそりそろそろと

万華鏡

覗けばそこには極彩色。くるりくるりと色を変え、同じ模様が現れることはないと言われている。

 

大切なものはすぐ壊れる。

あっけないほど。

初めて買ってもらったガラス細工のネコも落として割れてしまった。

母にひどく叱られた。

あんなにきれいなシャボン玉はすぐに消えてしまう。

万華鏡の景色もすぐに入れ替わってしまう。人の心も同じだ。

人そのものも、あっけない。

コワレル

 

彼は、大切なものは壊れない、と言った。壊れないように守るのだと。

 

井戸の底に落っこちた人間だったものを見て、ニサは「やはりあっけないな」と思った。

彼と実家に帰省した折に遭遇してしまった同級生。

アイツは知っていた。「お前がシロを殺したんだろ?」

 

シロは幼稚園の頃からの付き合いで、大の仲良しだった。それが、中学校に上がると徐々に冷たくなっていった。ニサがクラスで浮いていたから。

それでも、家に遊びに来たりしていた。あの日までは。

その日、シロはニサのガラス細工のネコを壊した。

その瞬間友情にもひびが入った。

大切なものは壊れていく。コワレテイク。

シロの弁解など覚えていないし、次の記憶ではシロは死んでいた。

ブルーシートでくるんで裏山の井戸まで運んで、彼女だけ落とした。

一応、事故、ということで片づけられ、ニサは上京した。

 

婚約も済んで、とうとう幸せな生活を手に入れることができる、大切なものは壊れない、そう信じてもいいと思っていた矢先にこれだ。

大切なものって、壊れないんでしょう?だから守るのでしょう?

コワシテハイケナイ。

 

井戸に人を落とすのはこれで二人目になってしまった。

こんなことなかなか体験できることではあるまい。

大切なものを守った。守ることが出来た、誰にももう壊させない。あのクラスのボスも、シロも、同級生も。

ニサは達成感と充足感でいっぱいだった。

が、すぐにニサは気が付くことになる。

本当に壊れないの?人の心は変わらないの?

コワレナイノ?

あたしにとって一番大切なのは何?彼の気持ち、変わらないの?愛情、コワレナイノ?彼がいないと。カレガイナイト。

ひどい寒気に襲われた。地面がぐらつくようだ。

本当に壊れないか確かめなきゃ。

タシカメナキャ

ニサは彼の元に走った。

そして……

 

彼を殺した。

 

ニサは失望した。あんなに壊れないと言い張っていたのに。話が違うじゃんって言ってやらなきゃ……あれ?彼が死んだ……?シンダ……?

誰が……あたしが……?コワレタ……?コワシタ……?

コワレテイク。アァ……。

壊れないなんて嘘ばっかり。

コレナラ……ワカッテモラエル……

コワレル コワレナイ コワシタ コワス

壊れることに憑りつかれて、壊すことに魅入られた人間が一人。

サヨナラ