春が来ていた

春が来ていました。花粉はもっと前から来ていましたが。

空気が柔らかくなりました。

春といえば、やはり「春の歌」が思い浮かびます。

 

春の歌 愛も希望も作り始める

遮るな どこまでも続くこの道を

 

神様に祈るように、そして自分自身に誓うように歌われているこのサビ部分が大好きです。

 

新幹線に乗って、日没後の山中を走り抜けました。ほとんどの駅を飛ばす新幹線だったので、かなり速い。揺れも音もすごい。

本当に空気を切り裂くことが出来るとしたらこんな感じなんだろうか、と強制的に押し流されていく景色を見ながら考えていました。

ナナサンが好む宮沢賢治作品の一つ、「よだかの星」にて、主人公のよだかは星を目指して、どんどんまっすぐに空を昇っていきます。それはそれはすごい速度です。

よだかが星を目指そうと決心してから、物語の最後までの描写は圧巻です。

よだかが星になろうとした理由、よだかが最後に兄弟に遺した教えに、賢治自身の死生観がよく表れています。

だからこそ、ぜひこの作品は読んでもらいたいなと思うのです。短いお話です。けれどそこに鮮やかで、脆くて繊細な表現がたくさん詰められている。夜明け前、そして夜の描写は賢治が重要視していた箇所です。だから美しい。

きっと、よだかの飛んだ速さはこの新幹線の比ではないのだろう、と思いをはせていました。

よだかは心優しくて繊細だった、だから生きてることがつらかった。

他の生き物の命を奪いながら自分が生きていることに耐えられなかった。

けれど、よだかは、「行かないで」と懇願する川せみを振り切って逝ってしまった。

遺された兄弟の気持ちはどうだったのか。トシに先立たれたあなたならわかるでしょう、賢治さん。

きっとよだかは出自に罪悪感すら感じた賢治でありトシだった。

次はこんなに自分のことで苦しまないように生まれてきたいと願ったトシと、平和な世界で殺生をせず静かに生きていたいと願った賢治の姿が星になったよだかなのかもしれない。

厳密に言うと、この作品が書かれ始めたとされているのが、トシが亡くなる少し前なので、もう数年後だったらもしかしたら兄弟の描写が違ったかもしれない。

ふとそんなことを考えられずにはいられませんでした。