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隙間

ついに訪れた、人間一人一人にマイクロと呼ぶにも小さすぎるようなチップが埋め込まれる時代が。 そのチップは、各国で管理され、各国のサーバーは某国のサーバーで一元管理されている。 このチップを管理システムが認証し、人間であることを承認する。 つま…

Garden

私は今、かわいらしい女性と向かい合っている。 彼女の柔らかく白い頬は桃色に上気し、眼はまっすぐに私を見つめている。 最高のシチュエーションじゃないか。 ただ一つ、彼女が私に銃を突き付けてることを除けば。 さかのぼること数十分前、私は屋敷で彼女…

取引

男は願った。 「終わりのないものがほしい、不老不死になりたい」と。 尽きることのない金銭があれば最高だ。 しかし老いることのない体さえあれば、金銭を稼ぐことができる。享受する様々の悦楽。 そんな男のもとに、一人の男が現れた。 何も変わったところ…

ひとつまみ

ふむ、こんな味だったか。 私は目の前の寸胴鍋に向かって呟いた。 中身はいつものスープ。好物だからよく作る。 だから手順に狂いなどないし、材料もいつもと変わらない。強いていうなら少し具材がいつも以上に私好みだが。 二人分作るのが習慣になっている…

彗星のように突然に

ぼとり。 この音は、僕が食べかけの焼きぞばパンを落とした音だ。 全くもって勿体ないの一言に尽きるのだが、今はそんなことに構っていられなかった。 半年前、決死の告白をした(せざるをえなかった)相手が、目の前に立っている。 もう会えない、そう言って…

習作

君のことが、嫌いだ。 今、私の足元の地面には、人間が埋まっている。 埋めた、という方が正しい。 私は、ある人間に恋をしている。埋まっているのはその友人だ。 彼はよく私に会いに来てくれた。なかなか彼と会えなくても、遠くから彼の姿を見つめるだけで…

風鈴を鳴らして

蝉が鳴いている。風鈴も音を立てないそれはそれは暑い夏の日、アイツは帰ってきた。 「ヨウ、いる?」 玄関先から顔を覗かせるアイツ、シュウはTシャツにハーフパンツ、パーカーといういつもの出で立ちだ。そろそろインターホンという文明の利器を覚えてもら…

コメット

さよならって言葉、嫌いなんだ。 彼女は濁りのない瞳で、そう言った。知り合って間もない日のことだったから印象に残っている。焼きそばパンを頬張りながら、確かに彼女はそう言った。 彼女は大教室で突然声をかけてきた。確か映画史概論の授業だった。 「そ…